フランスで300万人を動員した
1977年の大ヒット作品が遂に日本初公開!
フランス映画界において女性監督の先駆者として称えられているディアーヌ・キュリス監督が自身の少女時代の体験を基に、映画作りの経験が全くないなかで作り上げた『ペパーミントソーダ』は、鮮烈な輝きを放ちながらフランス映画界に登場し、1977年公開されるや300万人を動員し大ヒットを記録した。同年ルイ・デリュック賞を受賞。1979年には全米ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の外国語映画賞に輝いている。フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』の少女版とも評され、今なお青春映画の金字塔とされる伝説のフランス映画が47年の時を経て4K修復版を日本初公開。
フランスの女子校に通う思春期の姉妹が、社会変革の時代に次々と起こる「初めて」の出来事を経験する1年を描く
物語は1963 年のパリを舞台に、両親が離婚して母親と暮らす十代の姉妹の一年間を追ったもので、60年代フランスのリセに通う生徒たちの友情やいざこざ、教師たちの醜悪な実態、親たちの苦悩や愛情といった日常風景がコミカルで瑞々しいタッチで描かれる。タイトルは、妹がカフェで飲む大人向けの炭酸飲料「ペパーミントソーダ」を指している。姉妹が通う高校はパリ9区に実在するリセ・ジュール・フェリー校。
高評価続出、カルト的人気作品
米批評サイトRotten Tomatoにおいて批評家たちが投票するTomatometerで 91%、一般ファンが投票するAudience Scoreで76%が付与されたのに加え、著名な映画データベースIMDb RATINGで7.0/10を得るなど高い評価を獲得している。またニューヨーク・タイムズ紙によれば“奇跡と呼びたいほどの傑作” ロサンゼルス・タイムズ紙においても“情緒的でないのに心揺さぶられる”と大絶賛が続く。
ウエス・アンダーソン監督も絶賛
『グランド・ブタペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督は2021年、自身の監督作品『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の公開を記念してアリアンス・フランセーズ財団と協力して行った特集上映「ウェス・アンダーソンのフレンチ・コネクション」で、お気に入りのフランス映画7作品のトップバッターとして『ペパーミントソーダ』をオープニング作品に選定している。
女性監督の先駆者ディアーヌ・キュリスのもとに若き才能が結集
主人公であるアンヌ(妹)役のエレオノール・クラーワインは本作品が映画デビュー作。その後アニー・ジラルドやナタリー・ドロンといった著名なスターとの共演を果たす。フレデリック(姉)役のオディール・ミシェルはブノワ・ジャコ監督イザベル・ユペール主演「Les ailes de la colombe」(81・未)に出演。「Vénus」(84・未)では主演を務めた。2008年にはオリヴィエ・アサイヤス監督の『夏時間の庭』に出演している。
ディアーヌ・キュリス監督と共に脚本を担当したのは、後に『つつましき詐欺師』(96・劇場未) で1996年カンヌ映画祭脚本賞を受賞したアラン・ル・アンリ。撮影は1992年の『リバー・ランズ・スルー・イット』でアカデミー撮影賞を受賞したフィリップ・ルースロ。『戦場の小さな天使たち』(1987)と『ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女』(1990)で2度オスカーにノミネートされている。近年では『ファンタスティック・ビースト』シリーズも担当している。音楽は来日公演も行ったことがある人気歌手兼作家のイヴ・シモン。尚、フランス版ポスターを手掛けたのは、漫画家、イラストレーターとして知られるFloc’hによるもの。後にウディ・アレン作品などを手掛ける彼にとって、初の映画ポスターデザインである。2015年にはルイ・ヴィトンのトラベルブック エディンバラを発表し話題となった。
原題はペパーミントソーダのフランス語Diabolo Menthe(ディアボロ・マント)
1963年、夏休みの終わり、アンヌ(エレオノール・クラーワイン)は姉のフレデリック(オディール・ミシェル)とボーイフレンドがビーチでいちゃついているのを横目に、一人海辺を去る。クリフ・リチャードの「リビング・ドール」がラジオから流れている。夏休み最終日、姉妹は駅で父親に見送られる。
新学期初日、母親(アヌーク・フェルジャック)は彼女たちを学校へと送り出す。どうやらアンヌはクラス分けを心配している模様。二人は厳格な女子校リセ・ジュール・フェリー校に通っているのだ。
ある日アンヌは姉とボーイフレンドのマルクの間で交わされた手紙を盗み見する。知ってか知らぬか姉はマルクからの手紙を親友のミュリエルに預かってもらうことにした。早速アンヌはクラスメートにはマルクが自分のボーイフレンドだと嘘をつく。最近友人たちはセックスについて興味津々で、とんでもない知識不足ながらも真面目に語り合うのだった。
アンヌは授業もどこかうわの空でとにかく成績が悪く、美術の授業で描いた絵が下手だと先生にからかわれる始末。この頃のアンヌは生理が来るのを待ち遠しく思っている。それは女性としての成熟を意味するからだ。そのため、実際には生理が始まっていないのに、生理痛があるふりをして授業をさぼる。テストの課題は姉の答案を丸写しして提出するも、あっさりばれて0点に。それでもアンヌは小遣いが安いことや学校のみんなが履いているストッキングを母親が買ってくれないことに腹を立て、さらには集団でカンニングしたり自信のない教師への冷酷な仕打ちをしたりととにかく問題ごとばかりを引き起こし、ついに教頭を決定的に怒らせる。
むしゃくしゃしているアンヌにも行動に出る時がやってきた。母親のストッキングをこっそり履いて、学校に呼び出しを受けていた友人とカフェに繰り出したのだ。しかし、そこで姉に遭遇し、今度は姉にカフェを追い出されてしまう。そして、とうとう母親にこのままでは寄宿学校送りと宣言されることになる。
ディアーヌ・キュリスは、1948年12月3日にフランスのリヨンで生まれた。
1954年に両親が離婚した後、若きディアーヌは母親と姉とともにパリに移り住む。リセ・ジュール・フェリー校 でしばらく学んだ後、彼女と生涯の伴侶であるアレクサンドル・アルカディと出会いイスラエルのキブツ(集団農業共同体)で暮らす。彼らは1967年の六日戦争の間もそこに留まり、フランスに帰国後ソルボンヌ大学に入学した。しかし1968年5月の学生運動に巻き込まれ大学を中退し、ディアーヌは俳優として、アレクサンドルは俳優兼監督として、二人とも演劇の道へと進む。
1970年代に彼女は舞台女優になり、最初はルノー・バロー劇団で、その後カフ ェ・ド・ラ・ガールで活躍。ディアーヌ・キュリスの真のキャリアは、1970年代半ば、フィリップ・アドリアンと組んで演劇『The Hot L Baltimore』(1976) をテレビ映画用に翻案した時から始まった。その直後、彼女は 自伝的小説を基にした長編映画『ペパーミントソーダ』(1977)の脚本を書き上げ、監督デビューを果たす。この最初の映画で彼女は名声を得て、1977年にルイ・デリュック賞を受賞。
さらにキュリスは彼女の最も有名で成功した映画である『女ともだち』(1983)の脚本と監督を務めた。ミュウミュウとイザベル・ユペールが演じた二人の女性の親密な関係を描いた戦時ドラマはフランス国内外で人気を博し、アカデミー賞外国語映画賞とセザール賞(4部門)にノミネートされた。そして第40回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾った英語作品デビュー作『ア・マン・イン・ラブ』(1987)を手掛ける。この映画はキュリスの自伝的要素をほとんど排除した最初の作品である。その後キュリスは自伝的三部作を『セ・ラ・ヴィ』(1990)で締めくくった。監督自身の両親の別居のつらい記憶を基にしたドラマである。
1991年息子ヤチャ・キュリスをもうける。 ヤチャは後にサーシャ・スパーリングという名前で作家として活動している。この頃キュリスはパリでの生活の中でインスピレーションを得た作品を続けて発表した。イザベル・ユペール演じる30代の女流作家と、二人の愛人との関係を描く恋愛ドラマ『愛のあとに』(1992)とアンヌ・パリローとベアトリス・ダル演じる愛憎激しい“姉妹”の同居生活をスリリングに描いたラヴ・サスペンス『彼女たちの関係』(1994)である。キュリス監督の次の作品『年下のひと』(1999)は、波瀾万丈な恋愛をテーマにジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルが主演する豪華な時代劇で、19世紀フランスの偉大な作家 ジョルジュ・サンドとアルフレッド・ド・ミュッセの情事を描いた。
2000年代に入って発表した2本の作品は三角関係を描いたロマンティック・コメディ『ソフィー・マルソーの愛人〈ラマン〉』(2003)とランベール・ウィルソン演じるテレビ・プロデューサーが昔の仲間との再会を描く、彼女の10作目の映画『L’anniversaire』(2005)で、キュリスはより軽いジャンルへの転向を試みた。作家フランソワーズ・サガンの 生涯を描いた作品『サガン』(2008)では伝記映画に挑戦、シルヴィ・テステューが見事に演じた。そして『Pour une femme』は2012年夏にリヨンで撮影され、ブノワ・マジメルとメラニー・ティエリーが主演を務めた。この映画は、夫の視点から不倫を描いたもので、妻の視点から描いた以前の映画『女ともだち』の姉妹作となっている。 この映画は、2014年のCOLCOAフランス映画祭で観客特別賞を受賞した。最新作は息子サーシャ・スパーリングが脚本を手がけたファニー・アルダン主演の『Ma mère est folle』(2018)。
© 1977 LES FILMS DE L’ALMA – ALEXANDRE FILMS – TF1 STUDIO